5月末に製材加工関係の展示会(リグナ・ハノーバー)と建築の欧州視察旅行に参加しました。リグナ・ハノーバーは12年ぶり。
相変わらず、大量生産用の機械や高度加工機械が出展されていましたが、正直、今回はトレンド確認と思っての視察。

もう少し「AI」や「IOT」を利用した画期的な物が見られるかと思っていたが、見つけられなかった。
その後は、最近の木材利用のキーワード「マスティンバー」を使った物件の視察。

これは、オーストリア、リンツのそばAstenにあるパン工場に隣接する博物館。外観は、アルミニウム鋼板で覆われているが、実はCLT構造。大きなブロックを削り出して造った建物。600㎥の集成材のうち200㎥を削り取ったらしい。
続いては、ウイーン郊外の開発地区にあるビル。これもCLTと集成材の建物。

次は、スイスに移動して、木材の利用と環境性能を追求した建物。

これは、チューリッヒ市内にある新聞社の建物で、日本の坂茂氏の設計。複雑な加工を施した集成材を使用している。
何故、日本の設計者なのか?設計は場所を選ばない。自由。うらやましい。

最後は、同じくチューリッヒの動物園にある象舎。湾曲CLTをデザインしたもの。

今回、非常に勉強になったと同時に考えさせられた。
こんなに贅沢に木材を使う。日本で出来るのか?
今回訪問したドイツ、オーストリア、スイスは、木材産業の盛んな国で、国内では使いきれず輸出している。
それに比べて日本は木材の6割以上を輸入している。
人口が多いこともあり、国内の木材生産では供給が間に合わない。
木材全体の伐採も増えて利用も進んでいるが、製材用の原木は絶対的に足りない。
そんな状況なのに、先々人口現状に伴い住宅着工が減って、木材の利用も減ることから、その代替需要を模索中である。
その最先端が「CLT」。都市部でマスティンバーを使った建物も増えて来ている。
でも、どんなに頑張っても国内の資源だけでは間に合わない。
逆に、国内で出材される木材は大事に使わなければならない。...のではないか?
考えてみると、集成材を作るなら、丸太のまま使った方が強度もあるし、何よりコスト、環境負荷が少なくて済む。
何故製材するのか?
日本は貴重な木材資源を大事に使って来た。製材を組み合わせることで、少ない木材で強度のある建物を作って来たのではないか?
木が足りない日本が、CLTやマスティンバーのような使い方をして良いのか?
更に今年から環境贈与税が導入され、森林整備の不足分を補わなければならない。
本来、森林所有者、{山、森林」へ還元をしなければならないのに、供給不足を補う輸入木材との競合で
価格が頭打ち。還元出来ない。
出来ないから環境贈与税???